
質より量の時代であった昭和40年代。蔵の後継者として蔵に戻って来た現蔵元は、
時代に逆行するかのように高品質の『飲んで旨い酒』を醸す努力を始めました。
そして、山廃仕込(山廃酒母仕込)に、この小さな蔵の命運を掛けました。
杜氏に新進気鋭の中 三郎(なか さぶろう)を迎えてのことです。
その煩雑さと熟練した技能を要する山廃仕込は、時流から大きく外れ、
ほとんどこの手法を用いる酒蔵はなくなっていました。
しかし、きめ細やかでふくらみのある飲んで旨い酒は山廃でこそ醸せると信じた蔵元と杜氏は、
代々蔵に伝わる山廃の文献を紐解き、また、様々の人の教えを受けながら情熱を持って酒を醸し続けました。
現在では、長年の研鑚により山廃仕込に独自の手法を加味し、「天狗舞の山廃」というべき手法によって、多くのお酒を醸しております。
●山廃仕込とは
正式には、山卸し廃止酒母仕込。既成の乳酸を添加せず、自然の乳酸菌を育てて雑菌の増殖を抑制し、低温でじっくりと育てる酒母製造方法です。
現在一般的となっている速醸酒母と比べて、煩雑な加温操作と倍の日数の仕込期間(約30日)が掛かります。
山廃仕込で醸されたお酒は、一般的には濃醇で、ふくらみのあるお酒となります。